生き物の良好な生息生育環境である河川

 

−水生生物から見た多様なる河川形態−

 

 


 

「生き物の良好な生息生育環境である河川」

 

・多様な河川形態(特に河床材料、水深等)は、多くの種類の生物を可能にしている。

 

中流域の生物生息環境の良好な河川形態

 

 

モノアライガイ

少し汚れた水にすむ。

ヘビトンボ

渓流の砂礫底に見られる。

ヒゲナガカワトビケラ

流速の速いところ、渓流の砂礫底に生息する。

ウルマーシマトビケラ

砂粒・植物の破片などで巣を作る。山地から平地の流水中に広く生息する。

シロタニガワカゲロウ

川の中下流に見られるが、急流部の石面や石の下に付着して生活する。

モンカゲロウ

流れのゆるやかな区域の砂泥中に見られる。

エルモンヒラタカゲロウ

体はやや平たく、渓流の流れの速い石面に付着している。

クロマダラカゲロウ

山地渓流の石の下や間に生息する。

ヒラタドロムシ

上中流の砂礫に生息する。
石の表面に付着して歩行し、運動はきわめてのろい。

ハグロトンボ

比較的水のきれいな流水河川の流れがゆるやかな砂泥底に生息する。

 

・一様な河川断面は、多くの種類の生物の生息を不可能にしている。

 

中流域の在来河川

 

 

イトミミズ

大変汚い水に生息する。
溶存酸素が少なくても生存できる。

オオユスリカ

赤い色をしたユスリガがいる場合は酸素が少ない。
下水溝、沼地、河川などに生息し、種類が多い。

ヒメタニシ

泥底に生息する。
汚い水に生息する。

サカマキガイ

流れのゆるやかな川岸の石に付着している。
汚い水に生息する。

ドブシジミ

汚い水に生息する。

食 物 連 鎖

 

藻類は、食物ピラミッドの基礎となる。

 

 

−水生生物から見た多様なる河川形態−

 

現在行っている「多自然型川づくり」は、さまざまな生き物たちを育む多様な河川形態を保ったり、創り出すことと言えます。

そこにすむ水生生物を見れば、その河川形態の多様さがわかります。

 

上流・渓流域の生物生息環境の良好な河川形態

 

 

ミヤマカワトンボ

山地の渓流に生息する。

ダビドサナエ

山地・丘陵の渓流付近にすむ。
泥塵をかぶっている。

フタスジモンカゲロウ

流れのゆるやかな区域の砂泥中に生息する。

オオマダラカゲロウ

石の下、落葉などの下に見られる。

オオヤマカワゲラ

渓流の砂礫の間や、流れが比較的ゆるくて落葉などが堆積するところに多い。

カミムラカワゲラ

渓流の砂礫底に生息する。

ゲンジボタル

水のきれいな川にすむ。
体はやや平たく、砂礫の上をはっているが、泳ぐこともできる。

サワガニ

清流にすむ。

カワニナ

石に付着していたり、砂泥底にいることもある。

ニンギョウトビケラ

山地渓流・平地流に見られる。
砂粒で円筒を作り、その両側に大きい砂粒3唐個づつつけた巣を作る。

 

上流・渓流域の在来河川

 

 

多様なる河川形態の創出による効果

 

水辺の生態系

☆多様なる河川形態は、水辺の生態系をつくりだす。
☆藻類、水生昆虫等は、魚類等のえさとなっている。

 

1.生物学的水質判定法

 きれいな川の中には、きれいな水にしか住めない昆虫がいます。逆に、汚い川には、それを好む昆虫が生息しています。したがって、昆虫の種類を見分けることによって、その川の水質を判定することができます。

 

2.水生昆虫の採集方法

採集場所は、水深が膝程度までの流速が早いところで、石礫径が5cm25cmぐらいのものが多いところを選びます。

水質判定は、定量採集された水生昆虫を用います。

定量採集とは、定面積内に生息する全ての水生昆虫を採集することです。

定面積は、調査1回につき、A=0.502です。

 

例:0.50m四方のコドラート(枠)を使用した場合、
  1回の採集面積は a=0.50m×0.50m=0.252なので
  採集回数は、N=A/a=0.500.25=2回で、
  調査1回の定面積と成ります。

 

水生昆虫の採集

コドラート及びサーバーネット
(捕集網)を使用しての採集

水生昆虫の識別

分類と個体数の確認

 

3.Marvan法

 生物学的水質判定法には、何種類かの方法がありますが、ここでは確実性の高いと認められる「Marvan法」を紹介します。

川の水質は、4階級に分けて評価します。

水生昆虫は、水質判定に使用するそれぞれの種類固有の値が与えられています。(ザプロビ値、インジケーター価値)

水質判定には、評価平均(狽rap)の値が最も高い汚濁階級のものをその河川の水質とします。

 

           煤izihigi

 評価平均狽rap=――――――――

            煤ihigi

   zi:サプロビ値
   hi:採集されたそれぞれの種類の個体数
   gi:それぞれの種類のインジケーター価値  
 

 

 

ザブロビ値 zi
水生昆虫固有の、生息する水域とその割合で合計が10

インジケーター価値 gi
水質判定における水生昆
虫固有の指標性の重み

汚濁段階
(
記号)

貧腐水性
(os)

β中腐水性
(
βms)

α中腐水性
(
αms)

強腐水性
(ps)

 

水質階級
(
水の状態)

T
(
きれいな水)

U
(
少し汚れた水)

V
(
きたない水)

W
(
大変きたない水)

 








(
)

フタスジモンカゲロウ

9

1

0

0

4

シロタニカワカゲロウ

7

3

0

0

3

オオヤマカワゲラ

8

2

0

0

3

ヒラタドロムシ

3

5

2

0

2

ゲンジボタル

9

1

0

0

4

オオユスリカ 赤

0

0

3

7

3

フタスジモンカゲロウは、90%の割合できれいな水に生息する。
逆にオオユスリカは、70%の割合できたない水に生息する。

 

(水質判定の例)

生物名

個体数

Zizihigi

合計

os

βms

αms

ps

フタスジモンカゲロウ

5

180

20

0

0

200

シロタニカワカゲロウ

6

63

28

0

0

90

オオヤマカワゲラ

3

72

18

0

0

90

ヒラタドロムシ

2

12

20

8

0

40

ゲンジボタル

2

12

8

0

0

80

オオユスリカ 赤

1

0

0

9

21

30

 

 

 

 

 

 

 

総 和

16

399

93

17

21

530

評価平均
狽rap[%]

 

75.3

17.5

3.2

4

100

(例)ヒラタドロムシのZβmsの場合の値は
      ザブロビ値   Zβms5
      個体数       h2
      インジゲーター価値 g2
Z
βmszβmshg52220
となります。

 

判定結果

評定平均(狽rap)において、osの値が
一番高いので、この河川は貧腐水性(
れいな水)です。

 

引用文献・参考文献

 

*1

国立福井工業高等専門学校 環境都市工学科:「水生昆虫による水質調査支援プログラムの開発に関する研究報告書」(1997)

*2

同上:水生昆虫による水質判定プログラム(福井県版)」(1997)

*3

津田 松苗、六山 正孝/著:「水生昆虫」(1973)保育者社

*4

北川礼 澄/著、社団法人 淡生物研究所/監修:「ユスリカ」山海堂

*5

川合 禎次/編集:「日本産水生昆虫検索図説」東海大学出版会

*6

石田 昇三、石田 勝義、小島 圭三、杉村 光俊/著:「日本産トンボ幼虫・成虫検索図説」東海大学出版会

*7

財団法人リバーフロント整備センター/編集、建設省河川局河川環境課/監修:「平成7年度版 河川水辺の国勢調査生物種目録」

*8

文部省特別研究:「環境科学 研究報告集」(1982)

*9

滋賀県小中学校教育研究会理科部会/編集、大阪府立大学総合科学部 理学博士 谷田一三/監修:「滋賀の水生昆虫・図解ハンドブック」

*10

財団法人リバーフロント整備センター/発行、建設省河川局治水課/監修:「河川水辺の国勢調査マニュアル(案)(生物調査編)」

 

監     修:

津郷 勇  (国立福井工業高等専門学校名誉教授)

資料・写真提供:

国立福井工業専門学校 環境都市工学科

 

上記資料は福井県雪対策建設技術研究所発行の環境土木通信Vol 8(06.1998)より転載しました。

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