自然渓流プール型階段式魚道

 

研究開発―孫谷川魚道の評価―

 

 


 

孫谷川魚道「自然渓流プール型階段式魚道」

 

魚道の基本形

 

平面図

縦断面図

 

1号落差工 施工前

 

1号魚道 施工後

 

明確かつ滑らかな流線

泡の発生の少ない流れ

広くかつ深さのある
プールの配置

 

すぐれた段階式魚道の条件と孫谷川魚道の評価 ◎とても良好○良好△課題が残る

No.

条件項目

孫谷川魚道の効果判定

評価

1

呼び水が魚道の入り口にあること。

魚道の入口と呼び水は同一となる構造である。

2

魚道の位置が上下流の水筋と合致すること。

魚道の上下に魚窪地を設置して維持されるようにしてあることから、魚道の流れと上下流の水筋が常に一致する構造である。

3

魚道の入り口に深み(魚窪地)があること。

魚道の下流に深み(魚窪地プール)を設けてある。

4

魚道の途中途中に休息プールがあること。(休息と助走の場となる。)

各プールは設置後一年を経過した現在も埋塞せず充分な深みが自動的に維持されている。

5

一つ一つの階段落差が40cm以下であること。(超流流速が対象魚の突進速度を上回らないため、またアユの平均ジャンプ高40cmを上回らないように)

階段落差を30cm以下にしている。

6

プールが落差水流の減勢に必要な大きさを持つこと。

充分な大きさのプールを全面に配置してある。

7

階段落差の越流部は水平でなく不定形にすること。

全断面を越流させるのではなく、部分部分に越流部を設けている。越流部の石と石の間に生じるすき間が有効である。
 本堤コンクリートについては不充分である。天端をカッティングし、中央部のレベルを下げることが改良点である。

8

階段落差の越流部は下流側を切り欠けしてなめらかな水流にすること。

越流部は石組みであるため、天然の切り欠き構造である。

9

水流が泡だらけにならないこと。(泡が多いと魚は浮力を取れず泳げない。)

越流部についてのみ石を整然と並べることにより、越流による泡の発生は最小限に抑えられている。

10

水流が乱れないこと。そ上ルートとなる流線(水流の道筋)が明確に生じていること。(魚が目指す方向を失わないために)

明確かつ滑らかな流線(水流の道筋)が発生している。

11

景観性が良いか。

渓流環境に適した景観を実現できた。

12

経済性が良いか。

単純プール型階段式に比べ費用が高い。

13

施行性が良いか。

石組みに高い技能と多くの時間を要する

14

維持管理を必要とするか。

ほとんど必要としない。

15

追跡調査(生態調査)による効果判定

次のページの結果のとおりである。

まとめ  

当魚道は渓流河川にとって良好な魚道である。ただし、経済性と施工性を高めることができれば、さらに完成度が高まる。耐久性によって検証中である。

 


 

生態調査による魚道の評価

 

孫谷川に生息する魚の種類の変遷

時期

調査方法

アユ

ウグイ

カマツカ

タカハヤ

カワムツ

アマゴ

イワナ

河川改修前
(30年前)

聞き取り調査

魚道施行直前

捕獲と目視調査

×

×

×

×

×

1〜6号魚道
設置1年後

捕獲と目視調査

時期

調査方法

ドンコ

カジカ

アジメ
ドジョウ

サクラ
マス

アカザ

ウナギ

生息確認
種類数

河川改修前
(30年前)

聞き取り調査

13

魚道施行直前

捕獲と目視調査

×

×

×

×

1〜6号魚道
設置1年後

捕獲と目視調査

×

×

×

10

 考察 魚道の設置により生息する魚の種類が回復しつつある。=魚の生息環境の向上

 

魚の生息分布調査結果

区間

12号間

23号間

34号間

45号間

56号間

67号間

アユ

 

 

 

 

 

 

ウグイ

 

 

 

 

 

 

タカハヤ

 

 

 

 

 

 

カワムツ

 

 

 

 

 

 

イワナ

 

 

 

 

 

 

ドンコ

 

 

 

 

 

 

カジカ

 

 

 

 

 

 

アジメドジョウ

 

 

 

 

 

 

 

魚道施行前:生息確認区間

 

魚道設置後:生息確認区間

考察

生息する魚の種類と生息域が増大した。魚道の設置によってアユ、カワムツ、イワナ、アジメドジョウの生息域が拡大した。

 

1号魚道を6時間の間にそ上した魚の数

魚道のプール内にいたアユの個体数
1997821潜水目視観測)

考察

当魚道はアユ、カワムツがそ上できる魚道である。

考察

アユは全魚道にそ上している。
2号魚道内にアユが多くとどまっている。
他の魚道に比べ2号魚道はそ上しにくい魚道である。

 

上記資料は福井県雪対策建設技術研究所発行の環境土木通信Vol 5(01.1998)より転載しました。

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