生態調査の予備知識その1

 

土木工事で出会う身近な生き物たち

「魚」

 

清流の魚カジカ

 


 

身近な生き物たち「魚」

 

渓 流

平 瀬

捕獲地 足羽川上流魚見川

捕獲地 一光川

カジカ カジカ科カジカ属

成魚の体長

15cm 当種は陸封型の大卵型

分布

日本固有種。上流域から渓流域にまで生息する。

生活

肉食性で小魚も食う。

産卵

産卵期は、3月下旬〜6月下旬。雄が瀬の大型の石の下になわばりを張り、雌を誘い石の下面に卵を付着させる。一夫多妻制雄は孵化するまで卵を保護する。

食用

金沢のゴリ料理のゴリのこと。
未だ分類学的精査がなされていない。

シマヨシノボリ

ハゼ科ハゼ亜科ヨシノボリ属

成魚の体長

7cm

分布

北海道を除く日本全国。川の中流域を中心に、特に平瀬に多い。

生活

雑食性で、付着藻類や小型の水生昆虫を主に食う。 

産卵

5〜7月雄が半ば砂に埋った石の下に産卵室を作り、雌を呼び入れて、天井面に卵を産み付ける。産卵後は、雄が孵化するまで卵を保護する。

食用

小型は、唐揚げ、卵とじ、味噌汁、大型は佃煮にされる。

 

上 流 の 瀬

捕獲地 足羽川上流魚見川

捕獲地 足羽川上流魚見川

タカハヤ コイ科ウグイ亜科アブラハヤ属

成魚の体長

10cm

分布

日本海側では富山県以西の本州にいる。

生活

ヤマメより下流側、カワムツ、アブラハヤよりも上流側に住む。 

雑食性。

産卵

産卵期は晩春から初夏。

アブラハヤ コイ科ウグイ亜科アブラハヤ属

成魚の体長

13cm

分布

体表が油を塗ったようにぬるぬるしているハヤの意味。ウグイより小型。水の冷たいところに多い。

生活

雑食性。

産卵

産卵期は4月下旬〜5月下旬。

 

淀 み ( 砂 底 )

捕獲地 南川

捕獲地 魚時川

シマドジョウ ドジョウ科シマドジョウ属

成魚の体長

6〜14cm

分布

日本固有種。

生活

河川中流域から下流域上部にかけての砂礫底部に生息し、しばしば砂底に潜り込み、低生性の小動物やデアトリアスを食べる。

産卵

産卵期は5〜6月。

ドンコ ハゼ科カワアナゴ亜科ドンコ属

成魚の体長

18cm

分布

日本固有種、新潟県以西。

生活

夜行性、生きたものしか食わない。

産卵

雄が用意した産卵室の天井に雌が米粒大の卵を産み付け、雄が孵化するまで保護する。

食用

塩焼き、唐揚げにすると美味。

 

中 流 の 瀬

捕獲地 日野川

捕獲地 日野川

オイカワ コイ科ハエジャコ亜科オイカワ属

成魚の体長

15cm

分布

福井県には生息していなかったが、琵琶湖産稚アユとともに広まった。

生活

付着藻類から水生昆虫や落下昆虫まで食う雑種性。特に平瀬を好み、冬は深み、もしくは水生植物帯に住む。2年で成熟する。

産卵

5〜8月に岸寄りの流れの緩やかな平瀬の砂礫底に産む。雄の婚姻色は側面にあざやかな虹色を帯び、頭、尻びれに追い星というぶつが生じる。尻びれには雌に比べて著しく大きくなる。

特記

近年の河川改修の多くは川底を浅く平坦に広げ、流れのゆるやかな平瀬ばかりをつくる傾向にあるため、オイカワの生息は拡大している。

カワムツ コイ科ハエジャコ亜科オイカワ属

成魚の体長

15cm

分布

石川県以西。河川の上・中流域の流れのゆるやかな淵に多く見られる。

生活

岩の間や柳の下などに隠れる性質で、開けたところは好まない。この点はオイカワとは対照的である。縄張りを形成し、その中で流下物や落下昆虫を食う。

産卵

生後2〜3年で成熟し、淵尻から平瀬にかけて雌雄が集まり砂泥底部もしくは礫底部に産卵する。成熟した雄には朱色の婚姻色と追い星と呼ばれる白色のぶつが現れる。

食用

美味ではないが肉が多いので唐揚げで食べることができる。

 

中 流 の 瀬

捕獲地 日野川

捕獲地 日野川

カマツカ コイ科カマツカ亜科カマツカ属

成魚の体長

20cm

分布

岩手県以南

生活

川の中・下流域の砂礫底に多く見られ、砂とともに低生動物を吸いこみ、えら穴から砂を吐き出す。驚くと、砂にもぐり眼だけ出して身をひそめる。

産卵

5〜6月の夜間。卵は砂礫底にばらまかれる。

食用

肉量が多く、味か淡白なので塩焼きにするか素焼きにして醤油につけて食べる。

ウグイ コイ科ウグイ亜科ウグイ属

成魚の体長

30cm

分布

ほぼ日本全国

生活

河川の上流域から河口域まで広く分布する。付着藻類や水生昆虫、小魚、水面の落下昆虫、魚や獣の死骸までも食べる雑種性。

産卵

1尾の雌に多くの雄が群がって瀬の礫底に卵を産む。

食用

長野県や岐阜県では、塩焼きや田楽で食される。

捕獲地 耳川

捕獲地 日野川

アユ キュウリウオ科アユ属

成魚の体長

10〜30cm

特徴

日本を代表する清流の魚であり、代表的な釣りの対象魚である。

分布

日本全国

生活

春から秋、若魚期から成魚期を中流域で生活する。孵化した稚魚は秋に海に下り、翌春まで海で生活する。そ上期は、4月〜6月頃。河川中流域に入ると石礫のあるところに定住し、礫表面の付着藻類を削り取るように食べる。そこには独得な「はみ跡」が残る。

産卵

産卵期は、9月〜11月。下流に下って砂礫底の瀬に産卵する。ただし、福井県は漁業協同組合によって琵琶湖産の稚魚が放流されている。

ニゴイ コイ科カマツカ亜科ニゴイ属

成魚の体長

30cm 

分布

日本固有の亜種

生活

大きな川の中下流域から汽水域までの、流れの緩やかな水域の低層部に住む。

食性

雑食性で、カゲロウ、トビケラなどの水生昆虫を主に、付着藻類や小魚も食う。

産卵

4〜7月の降雨後に、川の中流域で産卵する。

食用

小骨が多いが、あらい、天ぷら、から揚げにすると美味。

 

淀 み ( 淵 )

捕獲地 日野川用水

捕獲地 日野川石田橋付近

タイリクバラタナゴ

コイ科タナゴ亜科バラタナゴ属

成魚の体長

6〜8cm

分布

1940年代に大陸から渡来したもので琵琶湖産の稚アユとともに日本全土に広まった。

生活

浅い沼地、河川敷内の池、灌漑用水の淀んだ場所に生息するが、河川改修で生息地は消失しつづけ、福井ではもはや一般的には見られなくなった。付着藻類と植物繊維質が主な餌で小型の水生動物も食う。

産卵

3〜9月。産卵管を伸長させ二枚貝の中に産み付ける。

ヌマチチブ ハゼ科ハゼ亜科チチブ属

成魚の体長

15cm

分布

日本全国の川で汽水域から中流域。

生活

悪食の雑食性でダボハゼの地方名を持つ。

産卵

春から夏にかけて、雄が転石の下や石垣のすき間に産卵室を準備し、誘い込まれた雌は天井部に卵を産みつける。

食用

佃煮の材料となる。小魚は卵とじや天ぷら、吸いものの種にすると美味である。

 

たとえば、日野川の場合こんな魚たちが住んでいます。

 川に育まれ、人は生活を営む。そして、昔も今も川は遊び場、魚は友達。昔に比べたら、随分魚の数と種類は減ったけど、久しぶりに川へ入ってみれば、いるいる、いろんな魚が生きつづけています。
 魚を捕ったときのあのドキドキ。少年の心がよみがえります。魚を持ち帰り水槽で育ててみたり、川の幸に感謝して川原でバーベキューをしてみたり、川での楽しみは尽きません。
 まだまだ、この川、捨てたもんじゃありません。魚が元気でいるうちは人も元気でいられるはずです。

―魚元気、だから人も元気―

[出典] ふるさと日野川探検隊(丹南地域環境研究会、武生ロータリークラブ)
発行「ふるさと日野川マップ」

 


 

写真

 

※シマドジョウ、ドンコ、タイリクバラタナゴ:

長谷川 巖氏

※その他 :

当研究所

 

上記資料は福井県雪対策建設技術研究所発行の環境土木通信Vol2(05.1996)から転載しました

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