平成18年度若狭湾共同調査連絡会議口頭発表

平成18年12月13日
福井県立大学 小浜キャンパス

福井県における大型クラゲ出現状況と水温変化

海洋資源部 環境研究グループ  松宮 由太佳


はじめに

 これまで大型クラゲ(エチゼンクラゲ:Nemopilema nomurai )の日本沿岸域への大量出現には、数十年の間隔がみられていたが、近年では、2002年、2003年、2005年、2006年と連続して大量出現しており、定置網等の沿岸漁業に大きな影響を与えている。現在、大型クラゲの日本海における生態、分布・移動経路等の研究が進められていることや、その出現範囲が広範囲にわたることから各海域で出現動向を整理することは重要である。そこで、これまで福井県水産試験場および漁業関係機関が収集した大型クラゲ情報を整理するとともに、出現動向の変化と海洋環境の変化およびその要因について検討を行った。


方法

 2005年および2006年に大型定置網へ福井県水産試験場および福井県定置網漁業協同組合が聞き取りを実施したデータを集約し、初めて入網が報告された日から11月30日までに入網があった定置網のデータを抽出し、日別平均入網数を算出した。海洋環境の指標として、若狭町常神地先の定置漁場内の水深10mおよび50mの水温データを用いた。

結果

 大型クラゲの入網は、2005年は8月17日に初入網が確認され、累計531統から計385,086個体の入網報告があった(図1)。2006年は8月19日に初入網が確認され、累計994統から1,228,860個体の入網報告があった(図2)。
 クラゲの入網が確認され始めた時期は、2005年および2006年とも水温下降期であった(図3,4)。2005年の10m深水温における水温変化の特徴として、9月6〜7日に3℃、23〜25日に1.6℃の水温低下が確認された。同年50m深水温においては、9月4〜10日に5.5℃の顕著な水温低下があったほか、1〜2℃前後の水温変化がたびたび記録された。2006年の10m深水温における水温変化の特徴として、8月17〜20日に2.6℃、8月27〜29日に2.3℃、9月16〜19日に2.3℃、10月5〜6日に1℃の水温低下がみられた。50m深では、8月18〜21日に2.2℃、10月8〜12日に2.1℃の低下および9月18〜21日に3℃の上昇となる変化が確認された。2005年は10月23日、2006年10月26日に水深10mと50mの水温がほぼ等温となり、以降、顕著な水温変化は確認されなくなった。

図1 2005年に大型クラゲの入網が確認された大型定置網の日別平均入網数および入網統数

図2 2006年に大型クラゲの入網が確認された大型定置網の日別平均入網数および入網統数

図3 2005年福井県若狭町常神地先の定置漁場における水深10mおよび50mの水温変化

図4 2006年福井県若狭町常神地先の定置漁場における水深10mおよび50mの水温変化

考察

 2006年の大型クラゲ累計入網数が前年を大きく上回る状況となった理由に、1網当たりの平均入網数の増加および入網個体数が多くなる10月中旬以降に操業している定置網の統数が前年と比較し上回っていたことの結果であり、2006年平均入網数の増加については、山陰若狭湾沖冷水の張り出し状況の影響を受け、沖合の分布状況および若狭湾沖の移動経路が異なったためと推測している。
 2005年において水温変化のみられた9月6〜7日および9月23〜25日の期間中、前者は台風14号が日本海を通過、後者は若狭湾沖から山陰にかけての前線の存在や台風17号が太平洋沿岸を通過しており、一方、2006年において水温変化にみられた9月16〜19日および10月5〜6日の期間中、台風13号が日本海を通過、台風16号と17号が熱帯低気圧となって太平洋沿岸を通過しており、これら両年の当該期間の水温変化は気象擾乱の影響によるものと考えられる。2005年では500および1,000個体以上、2006年では1,000および2,000個体以上の大量入網が確認されるような大型クラゲ入網動向の変化は、この水温変化の確認された翌日から数日の間に生じていることから、これら気象擾乱が若狭湾海域における海況やクラゲの分布状況に影響を与え、定置漁場における大型クラゲの入網動向を変動させた直接的な要因と推測した。
 今後の課題として、物理的に影響を与える流れや風の要因を検討していく必要がある。