研究紹介
アルカリ減量加工排液中のテレフタル酸の利用方法

1はじめに

ポリエステル織物のアル力リ減量加工により、その分解物であるテレフタル酸が本県だけでも1日約50トン排出されているという。
先に、我々はこの廃テレフタル酸をカルシウム塩として回収、炭化し、その細孔特性から活性炭としての用途の可能性があることを見いだした。
今回、これを実証化するため、廃テレフタル酸の回収条件の検討および炭化・賦活後の細孔特性と吸着能(脱色)の評価を行った。
また、この方法の経済性を評価するため、テレフタル酸の回収、炭化、賦活までのランニングコストを試算した。
2テレフタル酸の回収条件
 高濃度のカセイソーダが含まれている減量加工廃液にCaCl2水溶液を添加する場合、Ca(OH)2の析出を考慮に入れなければならない。pH値が12を越えるとCa(OH)2の沈殿が生ずるといわれているが、pH12以下ではCa(OH)2が生じないことがX線回析分析で確認された(図1)。安全をみてpH12以下に調整しておけばCa(OH)2の析出が充分防げると思われる。
 回収に必要なCaCl2は化学理論的には等モルだけが、この実験では100%の回収を得るには2倍モルが必要だった(表1)。重量的にはテレフタル酸1に対して1.3 のCaCl2を必要とし回収費用が嵩む感がするが、炭化後の塩酸処理工程で遊離したカルシウムのリサイクルを工夫すればそのコスト高はかなり抑えられると推定される。
3アルカリ土類金属添加の細孔分布への影響
 テレフタル酸カルシウムの炭化物中には炭酸カルシウムとして存在しており、それが塩酸で除去されるこ とによって細孔を形成し、約10oに中心半径をもつ細孔分布を示す。
 カルシウムの代わりに他のアルカリ土類金属塩を添加して作られる炭化物の細孔の大きさとこれらの元素との関連性を調べた。しかし、期待した細孔径と添加アルカリ土類元素との相関はみられずいずれも類似した細孔分布を示した(図2)。
4炭化物の吸着能
 メチレンブルー吸着能については比表面積が1300m2/gで幅広い細孔分布をもつ市販品に比べると劣るが、反応染料に対する吸着能は勝っている。とくに吸着されにくいとされるC.l.Rea-ctive Blue 21に対しても良好な吸着性を示す(表2)。これはこの炭化物の細孔径が比較的大きいことによるものと思われる。また、この細孔分布がシャープであることは選択的な吸着特性を示すことが予想されその面での用途が期待される。
5.コスト計算
 テレフタル酸のカルシウム塩は、粒径が約30um でかつ有機物のため軽く飛散しやすい。そのため、カルシウム塩の状態の時にベレットなどに造粒しておく必要がある。そうすれば後の炭化、酸処理(賦活)でのハンドリング性の支障もなくなる。
 前提条件として、Ca塩として回収−ベレット作成−炭化-酸処理(賦活)の工程でテレフタル酸カルシウム100kg/hrの処理をした場合のランニングコストを試算した。
 その結果、テレフタル酸カルシウムとして110円/kg、賦活品としてその収率(25%)から440円/kgのコストとなる。活性炭の市販価格数百円に比べるとコスト高になる。
6.まとめ
 アルカリ減量加工排液中のテレフタル酸を炭化物として利用する方法を実用面から検討した。
(1)テレフタル酸カルシウムを回収する際、CaCl2添加時のpHは12以下でよく、CaCl2添加量は溶存しているテレフタル酸の1.5〜2倍モル必要であった。
(2)カルシウム以外のアルカリ土類金属塩を用い細孔制御を試みたが、細孔特性に大きな変化はみられなかった。
(3)この炭化物(Ca塩)は反応染料に対し市販の活性炭相当もしくはそれ以上の吸着能を示した。
 ここで得られる炭化物の細孔半径は約10nmと通常の活性炭より大きく、分布がシャープである。そのため、選択的な吸着剤としての用途が期待できるとともにこの方法が細孔設計技術の1つになりうると考えられる。
 また、テレフタル酸をカルシウム塩とすることにより、その沈降性が酸析したテレフタル酸よりかなり速く、分離回収の上で有利になる。
 このように、若干コスト高になるものの、現在ポリエステル織物の減量加工で大量に排出されているテレフタル酸を炭化物として利用することの有効性を確認した。
参考文献
1)林他、福井県工業技術センター研究報告書、
  NO.10、66(1994)
          (応用化学研究グループ:宮下)